【コラム第1話】 「正社員を辞めたあと、空っぽになった気がした夜に」
「ありがとうございました」
最後のご挨拶を済ませて、何年も通った社員エリアを出たとき、 私はなぜか、勉強したわけでもないのに、「汗」をかいていた。
これで良かったんだ。 これでいいんだ。 これで、私は自分を守れたんだ。
そんな言葉を、心の中で何度も繰り返しながら、 駅までの道を歩いていた。
けれど、部屋に戻ってシャワーをあびていると、 なぜかそれまでの心裏の綿が、ほつり、ほつりと縛けるのがわかった。
「私、これからどうすればいいんだろう」
気がつくと、ころんとソファに座り込んで、 テレビもつけず、スマホもさわれず、 隣の部屋から聴こえる声だけが、 現実の総てを描いていた。
私はいま、無職。 空の時間の中で、「少しの親切な言葉」がほしかっただけなのかもしれない。
でもさ、夢のためじゃない、 体を壊しそうだったから、これで良かったんだよ。 なんども言い聞かせて、私。
このページには、答えはない。 ただ、同じような夜を過ごした人が、ここにいるよ。
私も、そんな夜を越えて、ここまで来たから。 あなたは、まだ「空のままでいい」んだよ。
空っぽになると、そこに新しい世界が入ってくるから。
だいじょうぶ。 なんとかなる。 ちょっとずつでもいい。
私はここで、あなたがほっとするまで、ずっと待ってるからね。
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